独自の肥料で作る自慢の有機野菜
長崎県島原半島。最南端の口之津町は、かつて南蛮貿易で栄えた港町だ。天草諸島を望む海に面した急峻な斜面には「蛇のごと」細い段々畑が続く。几帳面に耕された畑では、タマネギやジャガイモが春の収穫時期を迎えていた。
この地で、有機栽培に取り組んできた長崎県有機農業研究会(会員約70人)のタマネギ畑は、雑草まで青々として勢いがいい。タマネギ部長の溝田秋夫さん(55)も、「除草剤をまかんから、『どこにタマネギ生えとっと?』というくらい、草が多なりますけんね」と苦笑する。「だけど味は有機がよかですよ。刺激臭や辛みが少なくて甘みがあるけん、水にさらさんでも生で食べられます」と自慢するのは、会長の久間清一さん(50)。さっそく収穫したばかりの新タマネギをかじってみた。なるほど甘くてみずみずしい。
温暖な気候、水はけのよい段々畑に重粘土質の赤土、そして研究会独自のボカシ肥や個々の農家が工夫した堆肥をふんだんに与えている。だからジャガイモも、身がしまってデンプン質が多いものになると、ジャガイモ部長の、松尾和昭さん(54)は胸を張る。 |