寺原さんは、代々続く農家の生まれ。鹿児島市内にあるデパートに勤務の傍ら、農業を続けている。畑がある場所は、鹿児島県南西、東シナ海に画した吹上浜のそば。自宅から車で約30分かけて畑に通い、出勤前の早朝や、週2日の会社の休みを農作業に充てている。子供のときは、学校から帰宅するとまず田畑を手伝う毎日で、「炎天下の作業が辛く、農業は絶対に継ぎたくないと思っとったですよ」
その一方で、母親の病気などから、健康の大切さを感じてもいた。そんなとき、土を生かし、土の力によって作物を育てることを基本とする自然農法に出会った。
「健康を守るのは、やはり自然に根ざした安全な食べ物」と、昭和42年から自然農法を始めたが、農薬も化学肥料も使わないやり方に、当初は両親からも変人扱いされたという。しかし、「健康第一と頑張っているうち、自然農法の作物のおいしさに周囲の見る目が変わり、土作りの研究を重ねて、少なかった収穫量も上がっていった。
現在は米ぬかや油かす、牛ふんに、周辺の山林の土を加えて堆肥を作る。山林の土に住む土着菌の作用で発酵が進み、より力のある堆肥になるそうだ。約半年かけて発酵熱成させたこの堆肥で、ソラ豆のほか、米、ゴボウ、サツマイモ、カボチャなどを生産。自然農法の生産者グループに所属し、自然農法の普及にも力を入れている。 |